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長い沈黙 河村賢

Category : 新本


【紹介文より】
『ゲンロンy』創刊号「ヒューモアとしての菜食主義」でデビューした批評家・河村賢が、批評と社会学の可能性が交錯した自らの「ゼロ年代」を振り返る。2010年代以降の倫理学化する時代と、そこでの敗北の経験を経て、2000年代のゼロ年代批評の可能性を限界を探る。8万字を超えるインタビュー。

「僕はもう他人のために書くのはやめて、今度こそ自分のために書かなくてはならない、と思ったんです。そしてこれからは自分の欲望と自分の言葉に自分で責任を持とう、と。だから僕はもう一度批評家を目指すことにしたんです。」(本書107頁)



概要
「ゼロ年代」と呼ばれる2000年代最初の10年、批評と社会学とはかつてなく接近していた。社会学なら、抽象的な理論とアクチュアルな現実とを往復することができるという期待が、いまだ存在していたからだ。講談社『ファウスト』と「はてなダイアリー」を通して批評に出会い、仲俣暁生、東浩紀、柄谷行人に導かれて批評家への道を志した河村賢もまた、社会学に批評の未来を夢みていた。

そうした社会学への期待は、ゼロ年代批評を象徴した『思想地図』(無印)が2010年に終刊することで消滅する。ゼロ年代批評は終わり、批評と社会学は、ふたたび別々の方向へと歩み始めていた。そして、かつての批評青年・河村賢は、孤高の営みとしての批評に背を向け、大学の共同性の中にこそリベラル的価値の実現を求める社会学者・河村賢へと転身する。ゼロ年代の後につづく2010年代において、アクチュアルな問題意識は、個人の倫理を問い直すことへと求められた。「声をあげるリベラル」たちが台頭し、河村賢もまたその一人になることができるはずだった。

しかし、「リベラル」によって声高に語られると理念と、そうした「リベラル」がしばしば被害者を代弁することで、その経験を搾取し、被害者から声を奪うという現実との間には、目眩がするような落差が存在していた。その耐え難い世界の中で、河村賢は非暴力の実践としての菜食主義者の生活をはじめていく。同時に、ハラスメント被害者支援の一環として、誰にも読まれることもない被害の申告書を書く作業を続ける。それは、声をあげるリベラルを批判しながら、それでもリベラルの理念を生きる、ささやかな抵抗だった。そうして、河村賢の2010年代は、沈黙の中で失われた。

その長い沈黙の後で、河村賢は自らを批評家と名乗ることを決意する。それは、かつてみたゼロ年代批評にはらまれていた暴力性と、それが宿していた倫理や正義への希求を再度みずからのものとして引き受けるために必要なことだった。ほかの誰かのためではなく、自分の欲望のために書くこと。それは、みずからの欲望がもつ暴力性を受け入れながら、それでも反暴力の希望を失わないことに似ていた。

生活から動物への暴力を徹底的に排除する菜食主義の実践を続けながら、ほとんど不可避的に失敗するみずからの努力を笑うという「ヒューモアとしての菜食主義」(『ゲンロンy創刊号』)でデビューした批評家・河村賢が、矛盾と訂正に満ちた自らの軌跡を語り、批評と倫理の現在地を語る。ゼロ年代批評のアナザーストーリー。

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1,800円(税164円)

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